チョビ食べ

5月3日に、今どき、あり得ないニュースが流れました。
「富山県小矢部市の市立小学校で、男子児童に担任の50代の女性教諭が給食のおかずを無理やり食べさせ、嘔吐(おうと)させたとして、教諭が担任から外されていたことがわかった。同市教育委員会の野沢敏夫教育長は「行きすぎた指導で、児童につらい思いをさせ、申し訳ない」と話している。
野沢教育長によると、今年1月30日の給食の時間に、当時4年生の男子児童が嫌いなおかずを食べなかったため、女性教諭がおかずを口に押し込むと、男子児童が嘔吐した。汚れた床も男子児童に掃除させたという。児童の保護者から抗議を受け、2月に女性教諭を担任から外したという。」(朝日新聞デジタルより)
今どき、と書いたのは、かつては、無理矢理食べさせる教師がずいぶんいたからです。(さすがに吐かせるまではやっていなかったと思いますが)

給食に関する鉄則の一つは、「無理させない」ということです。だいたい、人間の生理に関することは、決して無理させてはいけません。トイレや水飲み、そして、給食などです。それを無理させるから、不幸な事態が起こります。

さて、
できるだけ好き嫌いがなくなるような指導は、私も、もちろん行います。
バランスよく食べることが、健康につながるからです。そして、子どもは、食べ物の見た目や先入観で好き嫌いを決めることが多いからです。
大げさな物言いですが、好き嫌いが多いと人生の楽しみがずいぶん減る気がします。余計なお世話だとは思いますが、もったいないです。
私は、小さい時からエビが苦手でした。あの歯触りが好きではなかったのです。が、就職してすぐ、先輩に連れていってもらった店で食べた「天重」のうまさにびっくりしました。なんだよ、こんなにうまいんじゃないの、これまで損したなあ、と思いました。

ですが、無理はさせません。それでは、返って逆効果になります。
私が、子ども達にいつも言っていたのは、
「ちょびっと食べなさい」
です。略して

チョビ食べ

です。
苦手な子は、顔をしかめたり、鼻をつまんだりして、一口だけ食べます。すかさず、私は言います。
「えらいなあ、がんばったなあ。」
でも、時に、一口もダメな子がいます。そんな子には、「なめるだけでいいよ」です。
私は、全く気にしません。そして、なめると(なめるふりでもよいのです)
「えらいなあ、がんばったなあ。」
です。
一年生を担任すると、もうなめることもできない子がいます。そんな時は、
「においだけでいいから」
「見るだけでいいから」
です。
そして、
「えらいなあ、がんばったなあ。」
です。

給食の時間が、修行の時間になってはいけません。わずかに、ほんの少しだけ、かすかにがんばればよいのです。