「極端回避性」バイアスを活用する

昨日話題にした「極端回避性」バイアス(心理的傾向・ゆがみ)は、学校現場においても現れます。
近隣の学校との「横並び」体質もそうですね。企業では差があった方がよいとされるのですが、学校はそうではないようです。

夏休みに入る日や夏休みが終わる日は、学校長の判断で決められるのですが、いつの間にか近隣の学校がみな同じ日程になっています。
これって、夏休みが他の学校より短いと、保護者から「短くて家族で過ごす時間がない」と言われるのではないか、逆に夏休みが他の学校より長いと、これまた保護者から「うちの学校は授業時間はだいじょうぶなのか」と突き上げられるのではないかと学校長が考えるからですね。 失敗を恐れての横並びなのです。

同様に、修学旅行の行き先も学年費の額も、なんだか、いつの間にか「横並び」になっているのです。
「無難」だけど、地域性に沿ったその学校の特色を出せるとは思えません。

さて、かつて教務として、通知表改定の提案をする立場に立ったことがありました。
そんなに大きな改定ではなかったのですが、その際、合わせて通知表に印字する文字のポイントを提案したのです。
とにかく、通知表に書く量が多すぎて、先生たちは悲鳴を上げていました。
それで、印字する文字のポイントを上げることで書く量(文字数)を減そうと考えたのです。

その時の通知表の文字ポイントは10.5でした。
私は3種類の通知表のサンプルを作り、その3種類のうちどれかを選ぶよう提案しました。

一つ目はこれまで同様の10.5ポイント、二つ目は12ポイント、三つ目は15ポイントです。
どれを校長先生はじめ職員は選んだと思いますか。
もちろん12ポイントです。

10.5ポイントは、これまで使っていたにもかかわらず「細かすぎるわねえ、よく見えない。」などと言っていました。
一方、15ポイントは「これは大きすぎますよ。保護者に何か言われちゃいますね。」と言っていました。
私は、もちろん最初から12ポイントをねらっていたので、「そうですか。皆さんがよいというので12ポイントにいたします。」と職員会議を終えました。

このような「極端回避性」バイアスの活用の仕方もあるのです。
どこか頭に入れておいて、いざというときに使ってください。