「木へん」がはねていても×ではない

ネットで、漢字テストの採点が厳しすぎると、ある先生が批判されています。
「木へん」がはねていたので、×としたのです。
おそらく、その先生は「漢字の許容」についての知識がなかったのだと思います。

文化庁が「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」という報告を、平成27年の2月に行っています。
http://bit.ly/2HzwMSF

その「経緯」として、以下のように記されています。

漢字の字体・字形については,昭和24年の「当用漢字字体表」以来,その文字特有の骨組みが読み取れるのであれば,誤りとはしないという考え方を取っており,平成22年に改定された「常用漢字表」でも,その考え方を継承している。
しかし,近年,手書き文字と印刷文字の表し方に習慣に基づく違いがあることが理解されにくくなっている。また,文字の細部に必要以上の注意が向けられ,正誤が決められる傾向が生じている。

ネットでのこの先生への批判は、「文字の細部に必要以上の注意が向けられ,正誤が決められた」ことへの批判なのです。
そして、このことは、「経緯」にあるように以前からずっと同じ考え方が示されてきたので、心ある先生なら、そのような×をつけることはなかったのです。

今回は、

手書きの楷書では,本来,「木」の縦画はとめても,はねてもよいが,一方だけが正しいといった認識が広がっている。
「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」(文化審議会国語分科会)の概要
http://bit.ly/2FLk030

とはっきり示されています。
同様に、「のぎへん」「うしへん」「いとへん」も縦画はとめても、はねてもよいのです。

ただし、私たち教師は、漢字指導においては、教科書体を標準として指導しています。
また、学習指導要領においても、書写の指導の際に、「点画の長短や方向、接し方や交わり方などに注意して、筆順に従って文字を正しく書くこと」とされています。 ですから、「許容」しつつも、もし、はねるなどの違いを見つけたら、このように書いていくと「教えていく」ことが大切なのです。 ×ではなく、「教える」のです。

私は、はねない漢字を書かせて、元のはねた漢字とともに、二つとも○をしていました。
ここらへんは、運用の問題で、保護者に説明してもよいと思います。

きちんとした情報を手にして、無用な批判を受けないようにしていきましょう。