航空機事故の可能性を高めに見積もるのはなぜか

「飛行機は怖い」「墜落事故が起こるかもしれない」と言って、遠方に行くのに飛行機に乗らない人がいます。そして「落ちないから安心」と自動車に乗って行くのです。 さて、航空機事故に対するこのような認識は正しいのでしょうか。

航空機の安全性についての情報を提供するアビエーション・セーフティー・ネットワーク(ASN)という組織があり、航空機事故に関するデータを発表しています。 https://aviation-safety.net/index.php

それによると、年ごとの航空機事故による死者数は以下のように推移しています。

1972年:2379
1980年:1300
1990年:712
2000年:1148
2010年:943
2011年:525
2012年:477
2013年:265
2014年:692
2015年:186
2016年:258
2017年:59

昨年はたった59人。全世界でたった59人なのです。
ちなみに、昨年2017年は航空史上、最も安全な一年だったと発表されました。

一方、
警察庁が発表した2017年の交通事故による死者数は3694人です。
https://www.npa.go.jp/news/release/2018/20180103001nenntyuu.html

日本だけでこれだけの人数の人が交通事故で亡くなっているのです。
世界では、世界保健機関(WHO)の発表によると、2013年の世界の交通事故による死者が約125万人です。

数字を並べてみます。
・航空機事故による年間死者数(世界)
59
・自動車事故による年間死者数(世界)
1250000

全然違います。
しかし、このようなデータがあるのに、どうして航空機事故の方が起こりやすいと考えてしまうのでしょう。

これは、記憶の中から簡単に取りやすい情報ほど過大に頻度や確率を高く見積もってしまう傾向があるからです。
これを、利用可能性ヒューリスティック(Availability Heuristic)と言います。

航空機事故は、1度起きると、非常に衝撃的な映像が何度もテレビなどで流されます。
それが脳に強く残ってしまい、印象として航空機事故は起こりやすいと判断してしまうのです。

とすると、
教室において、跳び箱が跳べなかった子が跳べるようになったという成功体験は、他のたくさんの子に見せた方がよいことになります。 できない子だけを集めて跳べるようにさせては、非常に損なのです。

跳び箱が跳べなかった子が跳べるようになったという映像を、他の子に強烈に見せることによって、「どの子にも可能性がある」という利用可能性ヒューリスティックを生じさせるのです。

成功体験を共有する意味は、こんなことでもあるのです。