知能検査を開発したビネーの真意

知能指数「IQ」(Intelligence Quotient)を測定する知能検査。
私たち教師にとっては、就学時検診において、特別支援が必要な子かどうかを判定する検査として認識されています。
そこでは、測定された知能指数は固定的なものとして扱われます。判定の材料とされるのです。

ところが、この知能検査を開発したフランス人のビネーは、そのような判定の材料として開発したのではなかったのです。
「MIND SET」(キャロル・S・ドゥエック)に、次のように書かれていて、私はびっくりしました。

「ビネーがこの検査を考案したのは、公立学校の勉強についていけない児童を見つけ出して、特別な教育をほどこし、もとの軌道に乗せてやるためだった。子どもの知的能力に個人差があることは認めながらも、教育や訓練しだいで知能は根本的に改善できるとビネーは信じていた。」

えっと思いました。
ビネーはこう言っているのです。

「最近の学者の中には、個人の知的能力は一定であって、向上させることは不可能だと主張する者がいる。このような残酷な悲観論には、断固として抵抗しなければならない。・・・訓練を積み、練習を重ね、そして何より正しい方法を習得すれば、注意力、記憶力、判断力を高めて本当に頭を良くすることができるのである。」

ということは、ビネーは、1回の知能検査でなく、何回も知能検査を行うことを想定していたに違いありません。
それも、指導したことによって知能指数が向上することを想定していたのです。

確かに、
テストは現在の習得状況を捉えて、さらに良くしていくための道具です。
成績を決めつけるための道具ではないのですね。