かつて、私のクラスに、なかなか学習に取り組まない子がいました。
えんぴつはボキボキに折れているし、ノートもぐちゃぐちゃでいたずら書きばかり。
机の中はというと、渡したプリントが大量に押し込まれていたり、貸し出し期限のとっくにきれた図書室のマンガが入っていたりします。 落とし物も多くて、机の周りには給食の道具が散らかっています。
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こんな子を担任すると、いちいち気になるし、ついつい注意したくなります。
でも、ここが思案のしどころです。
サークル冊子に、個別支援級の藤川和弥氏が、こんなことを書いています。
「一番指導したい事を決める」と彼は言います。
「特別支援学級の児童はどうしても叱られがちになる。
出来ていない部分が目につきがちだからである。
あれもこれもと指導するうちに「学校にいきたくなりません。」となってしま
う可能性もある。
大事になるのは、一番指導したい事を決めることである。
例えば、「友達を叩かない」が一番指導したい児童がいたとする。
だとすれば、学習態度や身辺整理などが多少良くなくても、目をつぶってあげ
ると良い。
何でもかんでも指導をいれると、良くなるどころかかえって崩れていくのだ。」
そうです。「一番指導したい事を決める」ことで「やらないことを決める」のです。
このメルマガの冒頭でふれた子で言えば、整理整頓についての指導は「やらないこと」でした。私が整理しました。
えんぴつを削ることへの指導も「やらないこと」でした。私が削りました。
「一番指導したいこと」は、ノートに答えを書くこと、黒板に書かれたことを写すことでした。
あれもこれも要求すると、その子はいっぱいいっぱいになっなしまい、よい成果は得られないのです。