「言葉というものが、うまく出てこない」「natural-born」

「鴨川ホルモー」の作者、万城目学氏の「ザ・万字固め」というエッセイ集を読んでいたら、「natural-born」について書かれた文章がありました。 「natural-born」とは、「生得の」「生まれながらの」という意味です。

その文章の話題は、万城目学氏の作品の表紙を数多く担当している、画家の石居麻耶さんの「natural-born」です。

万城目学氏は、
「いつから自分が人とちがって、絵がうまいことに気づいたのか。やっぱり、幼稚園や小学校の図画の時間に、まわりとの出来がちがうことで、自分の才能を知ったのか」 というようなことを、石居さんに訊ねてみたそうです。

すると、 意外な言葉が返ってきたのです。

「言葉というものが、うまく出てこなかったから。
言葉で自分の思うこと、感じたことを説明することが小さい頃から苦手で、絵で描いたほうがすんなりそれを表現できたから、気がついたら絵ばかり描いていた」

この言葉に、万城目学氏は、別世界の存在を突如教えられたようで驚いたといいます。
それは万城目氏が文字で自分の気持ちを表わす作家だからです。

石居さんは、万城目氏とは全く違う「natural-born」だったのでした。

私も、石居さんのような「言葉というものが、うまく出てこない」「絵で描いたほうがすんなりそれを表現できる」子がいることに、びっくりしました。

もしかしたら、私が担任していたあの子は、石居さんのような「natural-born」だったのかもしれないと思うのです。

皆さんも、クラスにいる、国語、それも作文を書くのが苦手な子は、言葉よりも絵を使うのが得意な「natural-born」の子かもしれないと、ちらっとでも考えてみてください。