「そうだよね、つい忘れちゃうんだよね。じゃあ、先生と練習しようね」

向山洋一氏が若かりし頃、同学年を組んだベテランの男性教師は、事務処理の実に速い人だったと言います。
そして、その先生のクラスは、実にきちんとしていて、「忘れ物が一人もいなかった」というのです。

この「忘れ物が一人もいない」ことを聞いて、向山洋一氏は「すごい」と思いつつも、何か変だ、異様だと感想をもらしています。

そのクラスの子は、きちんとしていましたが、「どこか暗く」「どこかおどおどしていた」のでした。

これはどういうことなのでしょうか。

ミスはしてはいけないという指導者のもとだと、子供はミスをなくすことにフォーカスせざるを得ません。

ミスをなくすことにフォーカスしていくと、気持ちが萎縮してしまいます。
「〜〜してはいけない」という気持ちのあり方が、前向きでなくなるのです。

そんなクラスだと、失敗は許されないことであり、失敗を恐れて挑戦することもしなくなってしまいます。
ミスしない失敗しないことが、最優先なものなのです。

しかし、人間はミスをするものです。
忘れ物をすることは当たり前で、それが自然です。
そのような寛容な考え方をもっていなければ、子供はのびのびと自分を発揮できないものです。

向山洋一氏は、音読の宿題を忘れた子にこう言います。

「そうだよね、つい忘れちゃうんだよね。じゃあ、先生と練習しようね」