「読書嫌いにする方法」3 やはり「差」を見せつけてはいけない

大森修氏は、クラスの子どもたちを読書好きにするために、本を読んだらシールを貼るという方法を改めます。
読んだ数だけシールが貼られた表を教室に掲示することは、本がなかなか読めない子にとっては、弊害が大きかったからです。

では、どんな方法に改めたかというと、シールではなく、本の名前を紹介し、それを掲示するという方法です。

では、この方法はうまくいったのでしょうか。

子供は読書するようになりました。
しかし、二学期半ばになって、保護者から次のような訴えがあったのでした。

「うちの子供は毎日のように図書館から本を借りてきます。しかし大半は読んでいないのです。それなのに読んだ本として掲示されているのです。読んでいないのに読んだと嘘をつく子供にはしたくないのです。どうしたらよいでしょうか。」 「作文技術で思考を鍛える」(大森修)

この方法も、 シール同様、子供に良かれと思ったことが、返って子供を苦しめていたのでした。

この子は、最初のうちは一生懸命読んだに違いないと大森修氏は言います。
しかし、そのうち読めなくなってきて、嘘をつくようになったのだと言うのです。

結局は、 シールは使わないけれども、読んだことが「数」として分かり、「差」を見せつけられるという点は、シールと変わらなかったのです。

私自身、シールを使わないにしても、本を読んだ数を意識させて競わせたり、読んだ本の名前を掲示していたことがあって、心が痛みました。

この大森修氏の考察のように、読んだ本の「差」を見せつけられる仕組みは、ダメなのです。弊害が大きいので、やめておきましょう。