大川小学校津波訴訟最高裁判決

大川小学校津波訴訟最高裁判決について、向山行雄氏が教育トークライン2020年9月号に記事を書いています。
向山行雄氏は、全国連合小学校校長会の元会長だった人で、このような裁判の当事者となる校長先生のトップだった人です。
それだけに、この裁判について非常に重く受け止めていることが伝わってきます。

大川小学校は東日本大震災において、児童74名、教職員10名津波で亡くしました。
海から5 km のところに位置する大川小学校、 裏山に逃げることをせずに被災しました。

最高裁判決の引用です。長くなります。
「大川小学校校長らは、石巻市における公教育を潤滑に運営するための本件安全確保義務を負ってるのであり、しかも、本件安全確認義務を履行するための知識と経験を収集蓄積できる職務上の立場にあったのであるから、上記義務を遺漏なく遂行するために危機管理マニュアルを作成する過程において、釜谷地区には津波はこないという釜谷地区の住民の認識が根拠を欠くものであることを伝え、説得し、その認識を改めさせた上で、在籍児童の避難行動と釜谷地区住民の避難行動が整合的なものとなるよう、調整を図る義務があったと言うべきである」

大川小学校はハザードマップでは津波の浸水域に入っていませんでした。ですから避難所に指定されていませんでした。
地区の人たちは「津波は来ない」「裏山の避難は崖崩れの心配があるのでやめた方が良い」という意見でした。

向山行雄氏は、数年おきに異動する教員たちが、その地域の古老よりも災害に対する深い認識を抱くことができるのだろうか、と疑問を投げかけています。 数年で異動する校長先生が、「住民の認識が根拠を欠くものであることを伝え、説得し、その認識を改めさせ」ることが、どれほど難しいことか、と言うのです。

このような不幸な出来事が二度と起こらないようにするために、校長先生に能力と権限以上に責任を押し付けるのではなく、 防災の専門家と地域住民と学校を交えた仕組みを考案していくべきだと思いました。