「下方比較」とは

「お金がありません」という本は、ワーキングプアや貧困層と呼ばれる人たち17人への取材をまとめたものです。
たまたま、新聞に書評が出ていたものですから、どんな暮らしをしているのか興味をもって、読み始めたのでした。

そこに描かれている貧困、生活苦は悲惨なものでした。
私が抱いた感情は様々なものでした。
そして、同情、疑問、怒り、憐憫といった感情とともに、「よからぬ」感情をもったのでした。

それは、貧しい暮らしをしている人たちと比べて、
・自分は恵まれている
・自分は運がよかった
・自分は努力してきた?
と思い、「ああならなくてよかった」とほっとしたことです。

一般的に、このような感情は、道徳的にもってはいけないとされているものです。
ですが、心に湧き出してくる感情は、きっとなんらかの意味があるはずなのです。
ですから、「よからぬ」と断罪し、表に出ることを封じ込めてなかったことにすることは、あまりよいことではないと考えるのです。

そう、その気持ちになったことをまず認めることからスタートしていきたいです。

さて、今回の私のように、自分より下とされる人物や状態と比較することを、心理学では「下方比較」と言うのです。

皆さんには、こんな「下方比較」をすることはないですか。
もしかしたら、日々のニュースを見ることが、知らず知らずに、こんな「下方比較」になっているのかもしれません。