「教える」のではなく「養う」

学期始めは、名前もれが多い時期です。
次から次へと名前を書くものが出てきたら、間に合わなくて、名前もれがあるのが当たり前です。

この名前もれに対して、どう取り組むかによって、大げさながら「教育の思想」がわかることを示してくれたのが向山洋一氏です。

私は、若いときに以下の文を読んで、感銘を受けました。
以来、子どもや保護者を非難しなくなりました。

「教える」のではなく「養う」イメージの典型例だと、私は考えています。

かつて、ある学校で、持ち物すべてに名前を記入することに取り組んだ。朝礼で目標を示して、各教室で点検したのである。
靴、帽子、教科書、文房具、実に様々なものに名前を記入しなくてはならない。当然、もれるものも出てくる。
だから、どの教室でも、「点検の表」が張り出された。毎日点検して、表に記入し、叱咤激励したのである。厳しく点検し、厳しく指導したのである。中には競争を仕組む教室もあった。

ところが、1人だけそんなことをしない若い女教師がいた。
何日かたっても、靴、帽子等に名前が記入されていないわんぱく坊主がいた。その先生は、1人1人を呼んで墨で美しく名前を記入してやった。今まできれいなな文字で名前を書かれたことなかったわんぱく坊主は、美しく書かれた自分の名前をうれしそうになでていたという。 その先生は、それを学級通信で報じた。名前を書いている間は、練習問題をさせていましたということも付け加えて…。
それ以後、そのクラスでは、すべての持ち物に名前が記入されたという。
「子供を動かす法則」 向山洋一