元々の「三匹の子豚」「アリとキリギリス」

「みんなが同じ心をもてるはずだ」と無意識に思ってしまうことを、「同質性の信仰」と、岡本薫氏は、著書「日本を滅ぼす教育論議」において呼んでいます。 日本人が、「みんなが同じ心をもてるはず」と信じこんでいることを「信仰」という言葉で表しているのです。
もちろん、「信仰」ですから、そのことに対して無自覚です。

この「同質性の信仰」が表れている一つに、童話があります。
有名な「三匹の子豚」「アリとキリギリス」において、それが顕著なのです。

「三匹の子豚」の元々の話はこうです。

一匹目はわらの家を建てましたが、オオカミが来て子ぶたを食べてしまいます。
二匹目は木の家を建てましたが、オオカミが来て子ぶたを食べてしまいます。
三匹目の子ぶたはレンガの家を建てました。オオカミは子ぶたを食べようとして、煙突から家に入ろうとします。鍋に落ちたオオカミは、料理されて子ぶたに食べられてしまいました。

元々は、オオカミは食べられてしまうのです。

それが、いつの間にか、オオカミが「もう二度といじわるはしないよ」と謝って、みんなお友達になりましたと改変されていることが多いのです。

「アリとキリギリス」の話の結末は、元々はこうです。

冬になって、おなかの空いたキリギリスがアリを訪ね、「お腹がすいて死にそうだ、食べ物をもらいたい」と言うのですが、アリは「夏の間に歌っていたのなら、冬の間は踊りなさい」と突き放して、キリギリスは飢え死にしてしまうのです。

元々は、キリギリスは飢え死にするのです。

それが、いつの間にか、キリギリスが「来年からきちんと働くから」と謝って、みんなお友達になたましたと改変されていることが多いのです。

これって、世の中の厳しさを教える童話ではなくなりますよね。

外国の人は、この結末の改変は、「誰でも努力や忍耐なしに簡単に友達になれる」安直な考え方だとしています。

ぜひ、「同質性の信仰」を意識していきましょう。
知らず知らずのうちに、この信仰に陥っているかもしれません。