自閉症スペクトラム症の子が苦手な「語用論」

発達障害の子、特に自閉症スペクトラム症の子が、コミュニケーションが苦手というのは、相手とやり取りしている言葉以外の気持ちや意図を察することが苦手だからです。

こんな事例があります。

ある子がノートを書いていて、書き間違えました。消しゴムを忘れたので、隣の子に「消しゴム持ってる?」と尋ねました。

これに対して、
A君「持ってるよ」
消しゴムを見せてそのまま自分の筆箱にしまいました。

B君「はい、どうぞ」
消しゴムを手渡しました。

同じ「消しゴム持ってる?」という問いかけでも、場面や状況によって、その言葉にこめられた意図は異なってきます。
この子は、消しゴムを持っているかどうか尋ねたのではなくて、「消しゴムを持っているなら貸してください」と頼んでいるのです。

このような言葉の使い方を「語用論」と言うそうで、生活場面でも、言葉をそのまま受け取るのではなくて、それを言った人の気持ちや意図を読み取るアプローチをしなくてはなりません。

これに対して、A君のように言葉通りにだけしか受け取らないと、「なんだあいつは!」とトラブルに発展しかねません。

こんなA 君のような「語用論」を解せないのが、自閉症スペクトラム症の子たちなのです。
とにかく、こんな症状があって、そこに悪気はないことを、まず理解してほしいです。