アッシュの「同調行動」実験

多くの人は行列を見ると、長いから時間がかかりそうだと思う一方で、たくさんの人が並んでいるこの行列の先には、きっとおいしい店があるのだと考えます。 そして、ついつい並んでしまう人も出てくるのです。

人は他の人と同じことをすると、妙な安心感に包まれます。
これを「同調行動」と言います。

「同調行動」に関する有名な実験に、心理学者アッシュの実験があります。
基準となる棒を見せて、同じ長さの棒を3本の中から選ぶ実験です。

画像を見てください。同じ長さはどれでしょうか。
すぐにわかるように、答えはBです。実験でもみんながBと答えました。

ところが、アッシュは違うやり方でも実験をしたのです。
8人の実験参加者に同じ部屋に入ってもらい、同じ質問をします。
しかし、1人を除いて他の人はみんなサクラなのです。サクラの7人はわざと間違えてAと答えます。
すると、残された1人がみんなの意見に流されて同じようにAと答えることが、32%もあったのです。

Aと答えた人に聞くと、「みんなから違うと言われるのが嫌だった」と仕方なく同調した人がいれば、「みんなの方が正しいはず」と心からAだと思い込んだ人もいたのです。

私たち日本人は、「世間の目を気にする」という言葉があるように、「同調行動」を取りやすい国民のようです。
そして、こうした「同調行動」は精神的に未発達な子供の方が、さらに取りやすいのです。

大人は様々な付き合いがあり、様々な世界をもっていますが、子供にはわずかな付き合いしかありません。仲間はずれになると自分の世界全部を失うのと同じなのです。 だから、仲間と同じ行動しないと仲間外れになるという恐怖感はとても強まります。

「同調行動」が、時にいじめの発生原因となるのは、この恐怖心のためです。
ですから、いじめの発生を防ぐ根本的な対策は、様々な考え方や意見が認められる学級の空気というか、風土というか、「同調圧力」が生じない枠組みづくりだと考えらるのです。