「肥満は伝染する」

2007年、ハーバード大学とカルフォルニア州立大学の研究グループが、「肥満と人間関係」について論文を発表しました。
そこでは、興味深いことに「肥満は伝染する」ことが示されたのです。

研究グループは、12,067人もの生活習慣や、交友関係といった社会活動に関わるデータを分析しました。
分析によると、ある人が太った場合、その兄弟や配偶者が太る確率が高くなる傾向になりました。
しかし、それよりも、その人の親しい友人が太る確率の方が高かったのです。

例えば、男性のAが太ってしまった場合、その妻が太る確率は37%、兄弟の場合は40%です。
しかし、Aの友人が太る確率は57%にもなったのです。
そして、この親しい友人同士の間で起こる肥満化リスクは、その友情が強ければ強いほど高かったのです。

家族みんなが太ってしまうというのは、食生活が似るからという理由が考えられます。
しかし、親しい友人同士であることが肥満に影響するというのは、やはり「同調行動」の心理ではないでしょうか。
ナリナリドットコム https://www.narinari.com/Nd/2007077735.html

さて、この「同調行動」により、少しばかりよいことに影響を与えることができるのです。

アメリカのミネソタ州で、税金を支払うことを市民に求める呼びかけを、次の4つの方法で行いました。

(1) 自分たちが納めた税金は、教育、警察、防災など様々なよい仕事に使われると告げる
(2) 税金を支払わない場合は、罰せられる危険性があると告げる
(3) 納税申告書の書き方が分からない場合の問い合わせ先を教えると告げる
(4) ミネソタ州の90%の人が、税法の義務を果たして、すでに税金を支払っていると告げる

最も効果のあったのは、どれだと思いますか。

それは、(4)だったのです。
「みんなが払っている」「みんながしている」という説明は、非常に強い動機づけになり、「同調行動」を生み出します。
「Nudge 実践行動経済学」 リチャード・セイラー