「指名のリレー」の弊害 その1

ある勉強会に参加しました。
その勉強会には、初めての参加でしたが、メンバーは快く迎えてくれ、こちらを気遣ってくれて、心地よく充実した時間を過ごすことができました。 と、終わりの時間になり、今日の感想をそれぞれが言う場面になって、司会の人が、
「では、Aさん、感想をどうぞ。感想を言いましたら、次の方を指名してください。」
と述べたのでした。
その瞬間、私の脳裏に、そんな「指名のリレー」に関する、あまりよくないイメージがポンと浮かんだのでした。

今回の勉強会のような、参加者同士がお互いを気遣うコミュニティなら、「指名のリレー」は全く問題ありません。

しかし、そのようなあたたかいコミュニティ・クラスになっていない段階で「指名のリレー」を行うと、弊害の方が大きいです。

私は、こんな授業を見たことがあります。

国語の授業、「ごんぎつね」
発問、「出口を出ようとするごんを、ドンとうちました」この時兵十は、どんな気持ちでうちましたか?
始めの子がこんな発言をします。
「うなぎを盗んだやつだ。とうとう見つけたぞ。」
この子の発言後、すぐさま手が挙がる。その子は教室中を見回し、おもむろに「N君どうぞ」と言います。
N君は、うれしそうに立ち、発言します。
「ぼくは、やっとあいつを殺せるぞ、と思ったと考えました。」
N君の発言後、これまた、すぐ手が挙がります。N君は、指名します。「K君、どうぞ」
K君は、次のように言う。
「これでもう、いたずらされずにすむぞ。村の人のためにも撃とう。」
K君は、次の子を指名し、このような「指名のリレー」が続けられるのです。

一見、子ども達同士がつながっているように見えます。仲のよいクラスのようです。
しかし、時に、以下のような子どもの顔も見えるのです。
なかなか指名してもらえない女の子達の不満そうな顔。そして、指名してもらえるかどきどきと不安そうな男の子の顔。

この顔は、

「指名のリレー」が、仲よし同士だけで行われている

ことをあらわしています。
この例の場合だと、男の子の中の仲よし同士で、指名のリレーが行われているのです。

子ども同士が指名し合う。そんな形式的なことだけを行っても、クラスの子ども達の心はつながりません。

先の私が参加した勉強会のように、あたたかい人間関係がすでに構築されている集団なら「指名のリレー」はOKです。
しかし、あたたかい人間関係を作っている段階では、弊害の方が大きいのです。