外発的動機づけは内発的動機づけを阻害するという実験

さて、奇妙なことに、ハーロウ教授は、サルたちに「内発的動機づけ」を発見したことを発表した後、そのことを掘り下げることをしませんでした。
まあ、ハーロウ教授は、どのような刺激を与えたら、どんな反応が出現するのかという刺激・反応を研究していたのですから無理もないと思います。 刺激以外の「主体的な」意思のようなものである「内発的動機づけ」は、ハーロウ教授の主張に相反するからです。
ですが、時が経って、エドワード・デシという心理学者が、その「内発的動機づけ」に目をつけて研究を深めていったのです。
そのデシの実験は、こんなものです。 これは、サルでなく人間にしたものです。
大学生を二つのグループに分けて、パズルを実験課題として与えました。 一つのグループは、パズルが1問できるたびに1ドルずつお金が与えられていましたが、片方のグループにはそんな報酬は与えられていませんでした。ボランティアで実験に協力してもらっていたのです。
この二つのグループが、それぞれ別室でパズルに取り組んでいる途中で、実験の監督者が「今からわたしはしばらく席を外します。その間は自由に何をしていてもかまいません」と言って部屋を出てしまいます。
そして、そっとその後の行動をマジックミラー越しに観察したのです。
お金をもらっていたグループは、実験の監督者が部屋から出た瞬間にパズルを解くのをやめて、他のことをやりだしました。
一方、お金をもらっていないボランティアのグループは、実験者が部屋を出ていっても同じようにパズルを続けていたのでした。
この実験では、「内発的動機づけ」で人が行動しているときに、「外発的動機づけ」を導入したわけです。
パズルを解く楽しいことをして、その上、お金ももらえれば、もっとやる気になると思いますね。
でも、そうはならないのです。 外発的動機づけは、内発的動機づけを阻害したわけなのです。
人って、ほんとへそ曲がりで、不思議な存在だと思います。