アンダーマイニング現象に気をつけよう

昨日、外発的動機づけが内発的動機づけを阻害していくことについて述べました。 これは、専門用語?で言うと、
「アンダーマイニング効果」
というものです。
アンダーマイニング効果とは、内発的動機づけがあって、自発的に、ただただ達成したい、ただただ楽しいからやっていたことが、報酬を受けることで「報酬を受けること」が目的になって、内発的動機づけがなくなってしまうことです。
これは、子育てや仕事をやってもらう際に、気をつけなくてはならないことだと思います。
例えば、お手伝い。 子供がお手伝いをやったときに、それについて興味があって楽しくてやっていたのに、ご褒美としてお小遣いを上げてしまうと、お小遣いをもらえることに動機づけがシフトしていまいます。
これは、「きれいになって気持ちいいね」とか、「上手なやり方だね」とか、内発的動機づけに沿う声かけがよいのだと思うのです。
例えば、勉強。
続きを読む

外発的動機づけは内発的動機づけを阻害するという実験

さて、奇妙なことに、ハーロウ教授は、サルたちに「内発的動機づけ」を発見したことを発表した後、そのことを掘り下げることをしませんでした。
まあ、ハーロウ教授は、どのような刺激を与えたら、どんな反応が出現するのかという刺激・反応を研究していたのですから無理もないと思います。 刺激以外の「主体的な」意思のようなものである「内発的動機づけ」は、ハーロウ教授の主張に相反するからです。
ですが、時が経って、エドワード・デシという心理学者が、その「内発的動機づけ」に目をつけて研究を深めていったのです。
そのデシの実験は、こんなものです。 これは、サルでなく人間にしたものです。
大学生を二つのグループに分けて、パズルを実験課題として与えました。 一つのグループは、パズルが1問できるたびに1ドルずつお金が与えられていましたが、片方のグループにはそんな報酬は与えられていませんでした。ボランティアで実験に協力してもらっていたのです。
この二つのグループが、それぞれ別室でパズルに取り組んでいる途中で、実験の監督者が「今からわたしはしばらく席を外します。その間は自由に何をしていてもかまいません」と言って部屋を出てしまいます。
そして、そっとその後の行動をマジックミラー越しに観察したのです。
続きを読む

「内発的動機づけ」はどのように発見されたのか2

「外発的動機づけ」の研究のために実験をしていたら、「内発的動機づけ」が発見されたということを取り上げ始めました。
そのハーロウ教授の「外発的動機づけ」の研究のための実験というのは、有名な「代理母の実験」ではなく、スキナーの行ったような、刺激・反応を複雑にしたものでした。
ハーロウは、掛け金や留め金、蝶番などの一連の仕掛けによって構成されたパズルを檻の中に置いて、そこにサルを入れたのでした。 ざっくりいうと、サルたちの問題解決能力を実験しようとしていたのです。
ところが、実験は意外な方向に展開しました。
サルたちは、このパズルに熱中したのです。 その上、サルたちは、そのパズルの解き方を発見したばかりでなく、一度解いたパズルを元に戻す方法まで発見しました。 そして、サルたちは、この行為を何度も何度も行ったのでした。
ここで特徴的なのは、そこにはパズルを解くことへの報酬があったわけではないということです。 サルたちは、人に報酬をもらっていたわけでもなかったのです。パズルを元に戻すことも求められていませんでした。
続きを読む