靴を揃える

学校にある靴箱(ついつい「下駄箱」という言い方をしてしまいます。)を見ていると、その子の心の状況がわかると言います。

子どもが落ち着いているときは、靴はだいたいそろって靴箱に入っているものです。
しかし、何らかいらいらし始めると、靴の置き方が乱れていきます。
靴がポーンと靴箱に投げ込まれるようになるのです。すると、かかとがそろわないどころか、重なったり、下手をすればひっくり返っていたりします。
おまけに、靴箱には靴以外のものが置かれるようになります。プリントだったり、消しゴムや石、よくわからないのですが、オタマジャクシのひからびたものだったりします。

こんな状況が、靴箱全体に広まれば、学級全体の荒れとなります。

私は、放課後、教室から職員室に向かう際、毎日、必ず、靴箱の様子を見ていました。
そこには、学校の授業を終えて、家に帰って行った子ども達の上履きが置かれています。

おっ、今日はそんなに乱れていないな。
N君は、今日ケンカしたけど、もう落ち着いたようだな。
あらら、ポーンと投げて帰った。慌てすぎだよ。でも、前に比べればマシだね。
・・・

そして、もし、乱れていれば、その上履きのかかとをそろえ、入れ直して整頓しておきます。
ただそれだけです。
そのまま放置すれば、翌朝、乱れた状態からスタートすることになるのだと考えていました。ちょっとの手間で、少しでも気持ちのよい状態からスタートしてほしかったのです。

高学年の子を担任することが多かった私。
子ども達に特に指導もしませんし、特に声もかけることもしていませんでした。
ただ、時々、帰って行く子ども達と靴箱で一緒になり、上履きを揃えている私の姿を子ども達は見ていました。

私は、毎日、黙って靴を揃えていくだけです。