ど力のつぼ

8月に入ったばかりで気が早いのですが、「夏休み明け」の道徳の授業の紹介が、教育トークライン2021年8月号に、三枝亜矢子氏によってされています。

それは、「ど力のつぼ」です。
長期休みで少しゆるんだ気持ちを、一気に吹き飛ばしたいと三枝氏は書いています。

さて、「ど力のつぼ」のお話です。
それは、読むだけで子供が、努力しようとする力のある教材です。

全文を掲載しますので、まだこの教材で授業をしたことのなかったら、ぜひやってみてください。

「ど力のつぼ」 1年 角野 愛

「お母さん、ど力のつぼのはなし、またして。」「ウンいいよ。こんどはなあに。」「さかあがり」「あらあらまだいっぱいになっていなかったのね。ずいぶん大きいね。」と、いいながら、お母さんはいすをひいて、わたしのまえにすわりました。そして、もうなん回もしてくれた、ど力のつぼのはなしをまたゆっくりとはじめました。
それはこんなはなしです。人がなにかはじめようとか、いままでできなかったことをやろうと思ったとき、かみさまからど力のつぼをもらいます。そのつぼは、いろいろな大きさがあって、人によって、ときには大きいのやら小さいのやらいろいろあります。そしてそのつぼは、この人の目には見えないのです。でも、その人がつぼの中にいっしょうけんめい「ど力」を入れていくと、それがすこしずつたまっていつか「ど力」があるれるとき、つぼの大きさがわかる、というのです。だからやすまずにつぼの中にど力を入れていけば、いつか、かならずできるときがくるのです。

 わたしは、このはなしが大すきです。ようちえんのときはじめてお母さんからききました。そのときは、よこばしごのれんしゅうをしているときでした。それからも、一りん車や、てつぼうのまえまわり、とびばこ、竹うま。なんでもがんばってやっているとき、お母さんにたのんで、このおはなしをしてもらいます。くじけそうになったときでも、このはなしをきいていると、心の中に大きなつぼが見えてくるような気がします。そして、わたしの「ど力」がもうすこしであふれそうに見えるのです。だから、またがんばる気もちになれます。

 お母さんのいうとおり、こんどのさかあがりのつぼは、ずい分大きいみたいです。さかあがりをはじめてから、もう二回もこのはなしを、してもらいました。でも、こんどこそ、あとすこしで、あふれそうな気がします。だから、あしたからまたがんばろうと思います。お母さんは、「つぼが大きいとたいへんだけど、中みがいっぱいあるから、あなたのためになるのよ」といってくれるけど、こんどかみさまにもらうときは、もうすこし小さいつぼがいいなあとおもいます。

「シングルエイジ教育 第22号」より(シングルエイジ教育研究会発行)